神仏参り・水合わせ

仏壇参り お水合わせの儀式
北陸地方では、昔から続く婚礼儀礼のひとつです。私がこの業界のお仕事をはじめた28年前はほとんどの花嫁様が行っていた儀式。最近では人前挙式に取り入れられたり、披露宴の演出にアレンジされたりとちょっと違うんだけどってことも良く目にするようになりました。

武家文化の強い加賀地方で伝わるお水あわせとは、花嫁様が挙式に向かわれる前に嫁ぎ先のご先祖様へ「本日お嫁に参ります。よろしくお願いします」とご挨拶に伺うご仏壇参りがございます。その際に婚家の敷居を嫁として越える「敷居またぎ」と言われる場で花嫁の覚悟を示す儀式が「お水合わせ」と伝わっています。
お水合わせ

挙式当日の朝一番の水を両家の母親が汲み上げて(井戸だった頃)青竹の筒にいれて準備をします。(九谷焼のめでたい柄のとっくりに白紙を巻いて水引をかけて準備した物もあります)新郎側より女性の使者が花嫁の自宅に、お迎えに出向き、花嫁様と新婦様宅のお水を預かって、新郎側の自宅へとご案内します。新郎側の自宅玄関外では男性側の使者が(この時の使者はご夫婦であることが望ましい)新郎側の水を持ちお迎えします。
玄関敷居の内側より、家長(新郎の父)より丸盆に素焼きのカワラケ(盃)を乗せてご用意いただき、両家の水をカワラケに新郎側、新婦側と注ぎ入れます。これにより一つの盃の中で両家が交わり「結婚により両家の繋がりを作る花嫁がこの水を飲み干し、交わった両家を離す事のないように頑張ります」という決意を持って飲んだ後にカワラケを地面に打ち付け粉々に割ってしまいます。
(そのカワラケは、後日新郎の母や親族によって敷地に埋められ嫁いでくれた花嫁を一生大切にして守りますと誓われます)割れた盃を確認した家長が、花嫁を先導して家の中へと招きいれ、仏壇参りの儀式へと向かわれます。

ひと言でお水合わせは両家の水をあわせる儀式と伝わりますが、お嫁にはいられる花嫁様の決意と迎え入れる新郎側の覚悟がしっかりと形として儀式として表される日本人の潔い心意気すら感じる素敵な行為です。
「重いなぁ~」と感じるか、キチンと迎えていただくと感じるかは花嫁様しだい。婚礼のおはなしは意味がありますね。先人から口述でお聞きしている儀式の意味を私たちは大切に伝えたい。
仏壇参り
お水合わせをおえて、白無垢に着替えた花嫁は、家長にまず案内されるのが神棚の前。お台所を守って行く事火を使う身として、これからよろしくお願いします。とお願いをするために花嫁が参拝します。(神社の参拝と同じ二礼二拍手にて)
続いて仏間に案内されて、仏壇へ手をあわせます(自分の数珠を持参します)「先祖の皆様にご挨拶のお参り」です。お参りの際は家長、使者の方ご一緒にお参りされます。その後は、新郎ご両親へご挨拶となります。

この一連を結婚式当日の朝に行うことで、挙式会場へ向かう準備が整います。
最近は、会場でお支度をされる事も多いですし、核家族化が進み仏壇などもまだ無いご家庭も増えて来て、この儀式をされる方は少なくなっていますが、事前にご先祖のお墓参りに花嫁様が行ってこられたりするなど、潔い心構えの意識を大切にされる方もいらっしゃいます。
儀式は、形なだけです。「心」「意味」を知っていただき、大切にとらえていただけると素敵な結婚準備になられることでしょう。